地球温暖化を見つめ直す(7) [科学]
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地球温暖化を見つめ直す(7)
不完全性の認識が必要
100年後の予測など検証不可能
まず前提として、環境という言葉には、二つの意味がある。客観的な周辺条件としての環境と、人間なり、ある生命体にとっての都合の善しあしという、価値観を伴った環境だ。この二つを混同せずきちんと区別して議論をしないといけない。
科学では、ある理論に基づく推測をして、それを検証するため観測で確かめることはよく行われている。そういう、役に立つということとは別次元での科学の分野での予測と、人の役に立つことが前提になる天気予報や、あるいはCO2など温室効果ガスの増加を織り込んだ数十年後、100年後の気候変動の予測とは、意味が違う。
ここで、気候予測の正当性の検証が必要になってくる。天気予報は幸い、毎日検証されている。だからそれなりに信用もされ、精度も上がっている。
計算結果の最大値だけを大きく報道
ところが、100年後の温度の予測などは、現在では検証が不可能だ。科学の場合には、検証ができないことの予測には科学的な意義はない。毎日の天気予報でさえ、せいぜい80%の的中率だ。
現在、数値モデルを使った気候予測が盛んに行われているが、研究の歴史が浅いし、不完全な問題点が多々残されている。この不完全性の認識は絶対に必要だ。
良心的な研究者はそれを承知しているが、そこから外部に出て来る情報に関しては、往々にしてその認識が抜け落ちている。対外的に発信される情報については、おのずと責任が伴う。そういう自律性が必ずしも伴っていない場合が多い。
また報道のあり方にしても、気候予測の計算結果の最大値だけを大きく報道するなど、一部のことがらのみを強調するような伝え方も目立つ。(談)
京都大学名誉教授
元日本気象学会理事長
廣田勇 氏
(ひろた・いさむ)1966年東京大学理学系大学院博士課程終了。米国大気科学研究センター客員研究員、気象研究所主任研究官、オックスフォード大学客員研究員、京都大学大学院理学研究科教授などを歴任。地球規模の大気の流れで気象を見る「グローバル循環」の考え方を提唱。
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