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地球温暖化を見つめ直す(8) [科学]

廣田勇 地球温暖化を見つめ直す8.jpg

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地球温暖化を見つめ直す(8)

CO2の影響 厳密な議論を

科学として意味があるのか

 100年先の予測は検証できないものだから、雲の出方や海面との相互作用など、様々なバリエーションを考えねばならず、仮説や仮定が多く入ってくる。科学では仮説の正当性がチェックされねばならないが、気候モデルによる長期予測というのは、チェックができないことをやろうとしている。果たしてそれが科学として意味のあることなのか。社会がそれを求めているということとは、全く別次元の話になってくる。仮説の正しい検証手段を持たない限りは、科学としては認められまい。
 言うまでもなく、気候は非常に複雑なものだ。多様な要素をできる限り計算に入れていくと、どこか不確定な要素があった場合に、何が本当に気候を変化させるか。CO2ももちろん大事な要素だ。しかし、生物学で言う「リービッヒの最小律」と同様、ある特殊な成分があるかないかで微妙なバランスが大きく崩れ、全然違う結果になることもある。東洋医学で言うツボの概念も同じだ。

気候のツボは雲

 それでは気候のツボは何か。私は雲だと思う。実は、気象学の中で雲が一番分かっていない分野だ。水蒸気が水滴になって雲になるためには核が必要だが、どこにどれだけ核になる物質があり、そのうちどれだけが雲になるかを把握するのは、困難を極める作業だ。それこそ、本当に良心的な研究者にとっては、そこが最も弱いことはよく分かっている。
 また、CO2の増加によって本当に気温が二~三度C上がれば、雲のでき方は今とは違ってくるはずだ。それがどう変わるかは、今のところ誰にも分からない。気温の分布が変わると上空の巻雲の量に影響し、それが太陽エネルギーの入射をさえぎるため、その変化が明確に分からない限り、温暖化の影響などは正しく論じられないという主張もある。私もほぼ同意見だ。
 私は現在の温暖化の議論についてかなり批判的な捉え方をしているが、温暖化が嘘だなどとは思っていない。むしろ、それを予測し社会に知らしめる際にどういう問題が現在あるかをはっきりさせておかないといけないと考えている。
 CO2に温室効果があることも、CO2が増加していることも間違いない。問題は、それが温度にして何度影響するのかという厳密な議論が必要なのだ。(談)

京都大学名誉教授
元日本気象学会理事長
廣田勇 氏
(ひろた・いさむ)1966年東京大学理学系大学院博士課程終了。米国大気科学研究センター客員研究員、気象研究所主任研究官、オックスフォード大学客員研究員、京都大学大学院理学研究科教授などを歴任。地球規模の大気の流れで気象を見る「グローバル循環」の考え方を提唱。

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